総義歯にせよ部分義歯にせよ、皆様が健康保険で作製された義歯には不満がいっぱいですよね。
入れ歯に厚みがあって、口の中が狭くなったような感じがするし、 バネや針金などの異物感が強くて不愉快ですよね。
特に食べ物の温度が分かりにくいのが困りますよね。食べ物の温度は味に響を与えます。
暖かい食事は暖かく、冷たい料理は冷たい食感で味わって食べることが出来て はじめて美味しく食事を楽しむ事ができます。
舌が入れ歯に邪魔されて、お話しがしにくいですよね。
入れ歯は元々人工的につくられたものですから、ある意味で異物です。
この物をお口の中に入れて慣らさなくてはならないのは、つらいですよね。
私は二十歳の頃、歯の矯正治療を受けました。
その時、そうですね、総入れ歯に歯が無いような形をした矯正装置を口の中に長期間入れた事があります。
初めて入れた日の違和感の凄まじさは今でも忘れられません。
『こんな装置をひとつ口の中に入れるだけて、頭痛までするとは !』
と、天を仰いで我が身の不幸を呪ったのを今でも覚えています。
健康保険で作製された義歯は安価であり、破損時の修理が比較的簡単であることが利点です。
欠点としては床が厚い( 約3~4mm )、たわみやすく、こわれやすい、汚れや臭いがつきやすい、人工歯がすりへる等が挙げられます。また、お話がしにくいのも困りますよね。
健康保険は病気になったら、その治療をするために日本国民が等しく同じレベルの治療を受けられるようにするために設けられた制度です。
ですから、出来るだけコストを抑え、歯科医師の技術料を最小限にまで抑えた規格診療です。
ある意味で殆どが必要最小限のものであるために、快適であるとか審美に関する事はあまり面倒みてくれないのです。
■健康保険で作製する義歯と金属床義歯はどう違うのでしょうか?
入れ歯には金属床義歯などの自費で行う義歯と、保険で作製するレジン床義歯の2種類があります。装着感、耐久性、食感などの点から、金属床義歯は保険で作るレジン床義歯よりはるかに優れています。
では、金属床義歯と保険で作製した義歯とはどう違うのでしょうか?
レジン床義歯と金属床義歯の違い |
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レジン床義歯[保険適用] |
金属床義歯[自費治療] |
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形態 |
強度の保持のために、厚みが必要(約3㎜)。
食べ物の温度が伝わりにくい。
違和感が大きい。
汚れや臭いがつきやすい。
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床部分に金属を使用するために薄く作製することができる。このために違和感の少ない、装着感の良い義歯となる。
臭いが少なく、衛生的である。
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審美性 |
部分入れ歯においては金属のバネが目立つ。
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自費診療であるために、部分義歯で作製する場合には、バネが目ただないように工夫する事も可能。
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精度 |
プラスチックであるため、たわみ、変形がおこりやすい。
破折しやすい。
しかし、修理も比較的簡単に出来る。
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精度・吸着性ともに良好。
丈夫でこわれにくく、たわみ、変形が著しく少ない。
良質人工歯の使用により、咀嚼が効率よく行える。
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発音 |
舌の動きが義歯の付属物に邪魔されて、上手に話が出来るようになるまでに時間がかかる。
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床部分を薄く作製するため、自然に近い形態になり、舌の動きが義歯に邪魔されることが少ないため、発音しやすい。
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味覚 |
大切な部分がプラスチックで覆われるために、食べ物の温度が分かりにくい。そのため食品の本来の味が変化しやすい。
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食べ物の温度が伝わり易いので、本来の食品の味に近くなり、美味しく食事を楽しむことができる。
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上の表の右側は、義歯の真ん中の部分が健康保険でつくった義歯とは異なって、金属で出来ているのがお分かりと思います。
写真の金属はコバルトクロムという合金を利用しています。
この、真ん中の部分に金属を使用すると、食べ物や飲み物の熱が伝わりやすく、自然に近い味覚が得られます。
また、1~1.5㎜くらいまで薄く設計できますので、馴染みやすく違和感が少なく、発音なども比較的なめらかにすることができます。
人工歯にも選択肢が広がり、個性に合ったものを使用する事が可能ですので若々しい口元が得られます。
また汚れがつきにくく、気になる入れ歯特有の臭いが少なく衛生的です。
この金属は部分義歯にも応用できます。
とかく、部分義歯には付属物が多くこれが発音の邪魔になったり、舌に不快感を与える原因になっています。
部分義歯に金属床を使用しますと、患者さんは
『口の中が広くなった。』
『入れ歯が歯茎にぴったりと馴染んでとても気持ちが良い。』
と異口同音に同じような感想を述べられます。
それでは、金属床義歯の種類について見てゆきましょう。
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