さて、上の写真をご覧下さい。
一見、普通のスマイルデンチャーのように見えますよね。
はぐきにデコボコがある場合には通常の入れ歯でも同じですが、スマイルデンチャーでもはぐきの飛び出している部分にかみあわせる力が集中して、この部分に『当たり』が出てきて、結果として『痛くてかめない!』という状態におちいります。
上の写真では、左右の奥歯が2本づつ、合計4本欠損の入れ歯です。通常はスマイルデンチャーの絶好の適応になります。
下の写真は、この患者さんが、上の入れ歯を作る前に使用して?いた入れ歯です。
確かに、バネが光り、ハリガネが舌の動きを邪魔して気持ち悪そうな入れ歯です。
多分、食事中に食べ物が入れ歯の下に入り込んで、しょっちゅう痛い思いをされていた事が、容易に推察されます。
この患者さんの場合には、はぐきに骨が出っ張った部分やデコボコがあるために、実際問題として、この入れ歯でかむと痛いので、ほとんど使用していなかったようです。
さて、このような状態では、通常の術式で『スマイルデンチャー』を作製しても、痛くてかめないのは目に見えています。
皆さんは板の間に正座をする場合に、そのまま座った方が楽ですか、それとも座布団をひ いて座った方が楽ですか?
答えは決まっていますよね。
座布団をひいて座る方が楽です。 この考え方で、入れ歯の座布団の材料について研究がなされました。
多くの材料が吟味され最終的には『生体用シリコーン』が開発されました。
(詳細は『生体用シリコーン裏装義歯』のページに記載してあります)
この、生体用シリコンとスマイルデンチャーを合体させようと、いろいろな実験が繰り返し行われました。
しかし、スマイルデンチャーの材料であるスーパーポリアミドと生体用シリコーンを貼り付けた場合に、かむ力が加わると、2つの材料の膨張率・収縮率に違いがあるために、生体用シリコーンがスマイルデンチャーから剥がれてしまうという状態になりました。
この問題を解決するには、生体用シリコーンとスマイルデンチャーを貼り付ける強力な接着剤が必要になります。
しかも、体に害があるものは使用できません。
長い年月に渡る研究と試験の繰り返しで、見事にこの接着剤が開発されました。
その結果、この『スマイルデンチャーシリコン』が完成しました。
このスマイルデンチャーシリコンを作製している『株式会社 三和デンタル』では、以前『シリコンフィット優』という製品を世に送り出していました。
現在は作製中止となり、現在はこの『スマイルデンチャーシリコン』を作製しています。
この『シリコンフィット優』という製品は生体用シリコーンの裏打ちがあり、審美的にもスマイルデンチャーに勝るとも劣らない製品でした。
現在はもう作製されていない『シリコンフィット優』。
今では『スマイルデンチャーシリコン』が大活躍しています。
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しかし、使用している材料がスマイルデンチャーのスーパーポリアミドではなく、ポリエステル樹脂を使用しておりました。
このポリエステル樹脂の欠点は、バネに相当する『ウイング』の部分が硬く、取扱いが荒いと折れてしまうという欠点がありました。
スマイルデンチャーシリコンはこの『シリコンフィット優』の欠点を見事に補って完成された入れ歯と言えます。
スマイルデンチャーの裏面に生体用シリコーンを貼り付けたスマイルデンチャーシリコンは、審美性が良い事は勿論ですが、ギュッとかみしめられる入れ歯になっています。
この患者さんにスマイルデンチャーシリコンを装着した後、いつものように
・たくあんを食べてみて下さい。
・ピーナッツも早めにかんでみて下さい。
とお願いをして、一週間後に予約を取りました。
この患者さんは入れ歯を口の中に入れておく事自体には慣れており、痛いながらも時々保険で作った入れ歯でかむ事をしておられましたので、入れ歯の違和感に関してはほとんど苦痛らしいものは感じられなかったようです。
一週間後の予約の日、来院された患者さんにたくあん・ピーナッツはいかがでしたかと尋ねると、
『どちらも全く問題なくかめました。』
とのお返事。 安心しました。
従来のスマイルデンチャーではどうしても痛くてかめない場合で、はぐきにデコボコがある事が原因である場合には、このスマイルデンチャーシリコンがその本領を発揮します。
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