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顎関節症について

◆ 顎関節症とは

最近、顎関節症で悩んでいる方が非常に増えてきました

 この顎関節症につきましては、『院長紹介』の『院長坂上俊保の生い立ちと現在』のページで述べさせて頂きましたように、まだ歯科医師になる直前の学生時代の顎関節症の患者さんとのかかわりがきっかけとなり、私が歯科医師として仕事をしてゆく上では、最も重要で頻度が高く、多くの症例を積み重ねて参りました。

 顎関節症に伴う無数とも言える、苦悩・苦しみに接し、顎関節症の患者さんと向き合うたびに、自分自身の持てる知識と技術を駆使して多くの患者さんを治癒に導いて参りました。

 今では、この『顎関節症治療』は私の歯科医師としてのライフワークのひとつとなっております。
 顎関節症はテレビなどのマスコミでの報道も目立ち始め、雑誌等で頻繁に取り上げられ、かなり分かりやすく説明されているようです。

 また、患者さんからは大変多くの質問や問い合わせを頂きます。

 長期間に渡って続く、肩こり腰痛、激しい疲労感・・・噛み合せが原因?

 食事の際『ガクガク』鳴る顎。時には周囲の人からも気づかれる。

 お口が大きく開かずに、食事の時顎の関節が痛い。

 そのために、食事がうまく出来なくてつらい思いをしている。


 多くの人が抱える症状なのに、簡単には治りません。
肩こりが激しく、背中・首まで痛い」
腰が痛くて、仕事に集中できない」
起きてみると、グッタリと疲れている


 このような症状にお悩みの方はすでに様々な治療法をお試の事と思います。

 はり・整体・マッサージ・整形外科通い・薬剤の服用など…

 しかし、根本的な解決にならず、多くの方が未だに、ひどい症状で悩んでいます。

 その理由は、痛みや症状を抑えるだけの治療だからです。根本的な原因を取り除かない限り、完治は不可能です。

 しかも、その原因が噛みあわせ(上顎に対する下顎の生理的な位置のズレ)であるとは全く考えつかないのも無理はありません。

 最近の傾向として、若い方にこの顎関節症が増えてきた事が挙げられます。


 私が、顎関節症・噛み合せの治療を始めた昭和50年代後半の頃は、ほとんどの患者さんが40歳台から80歳代の方で、私自身も
『女性の更年期障害の隠れた原因』
とか
『働きすぎでストレスに打ちひしがれた末路』
であると思っていた時期もありました。

 しかし、年々若年化の傾向が進み、最近では、十代後半の方や中学生までもが、色々な症状を訴えて来院されるようになりました。

 ですから、以前は『肩こり』『腰痛』『頭痛』『生理不順』『めまい』『耳鳴り』『不眠症』などの、いわゆる『女性の更年期障害の隠れた原因』『ストレスによる色々な症状』に注意をしていれば済んだはずの顎関節症治療も、最近でもっと患者さんのライフスタイルに気を配って対応しなくてはならない病気へと変わってきました。

 特に、若い女性で、他県や他国で受けた、歯科医学上どう考えても納得のゆかない短期間で行なわれた『審美歯科』治療後の顎関節症は、目も当てられない状態になって来院されます。

 かなりの費用をお支払いになっておられる様で、その分割の支払いも済んでいないような状態では、私も泣きたくなるような想いで説明をせざるを得ないといった状況で、治療の難易度もかなり高いものになっている事が多いのは悲しい事です。

 『審美歯科』は素晴しい治療で、私も積極的に行なっておりますが、『審美歯科』の目的は、患者さんの心に働きかけ、安心して心安らかな日々を送る事が出来るようにするための治療です。

 お口の中を拝見しますと『取ってつけたような綺麗な歯並びや白い歯』になっており、顔色や全身状態は憔悴しきっており、歯科や歯医者に対する不信感の塊のようになっています。これでは本末転倒です。

 歯科医学の基本、特にお口の中の噛み合わせとの調和をを無視したような短期間での治療、歯を取り巻く周囲の組織との調和を無視したような治療には、ただ同じ歯科医師として悲しいの一言です。

マスコミ等の報道では、
『口が開きにくい・口を開けると顎がカクカク音がする』といった症状をとり上げて詳しく解説がなされています。

最も多い症状ですが、実際にはこの症状は顎関節症のほんの一部に過ぎません

 本当はもっと厄介で、その原因も実に漠然としたものが多いのが特徴です。

 さらにはかなり沢山の方がこの顎関節症という状態を持っているにもかかわらず、色々な症状が顎関節症の症状であると自覚していないケースも多く見受けられます。

 何かおかしいなとは思いながらもとりあえず日常生活をなんとか送っているといった場合もあります。

ガクカンセツショウ(顎関節症)ってどんな病気なの?

専門的な解説を致します。

顎関節や咀嚼筋の疼痛、関節雑音、開口障害ないし顎運動異常を主要症候とする慢性疾患群の総括的診断名であり、その病態には咀嚼筋障害・関節包・靱帯障害、関節円盤障害、変形性関節症などが含まれる。(日本顎関節学会)

よく分かりませんね !!

要するに、

口が開きにくい
口を開けると顎がカクカク音がする
物を噛もうとすると顎のつけ根(耳前方部)や頬の筋肉が痛い

といった症状が比較的長期間に渡ってあり、場合によってはこれらの症状が
全身にまで波及して
なかなか直らない状態に対する病名

という事になります。

 これに加えて自覚症状の無い場合を含めますと、潜在的な患者さんの数は相当なものになると考えられます。

 最近では、当院を受診される患者さんの10人に7人くらいは、程度の差はあれ、このような状態が認められるようになりました。

・すべての顎関節症は治療されるべきでしょうか?

 御安心ください。
 顎関節症には一時的に症状が出て、その後半年程度で自然に治ってしまうものが7割程度あると言われています。

 ですから口が開きにくい・口を開けると顎がカクカク音がするといった症状を初めて自覚した場合には、しばらくそのまま様子をみていても構わないと思います。

 半年たってもなかなか症状が改善されないとか、症状がどんどん強くなってくる場合には、歯科医の診察を受ける事をお勧め致します

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・残りの3割は治療されるべきでしょうか?

 これが問題です。

 後から述べますが、顎関節症の本態は下アゴのずれが原因になっている事がしばしばです。

 下アゴがどれだけずれていれば個人差の範囲で、どれだけずれたら病気かという非常に微妙なところで判断を下さなくてはなりません。

 これは歯医者さんによっても見解に相違があります。

 結局、自分の主治の歯科医の先生の説明を良く聞いて、十分に先生と相談した上で決断を下すことになると思います。

 自分で自覚症状を認識していて、治療を希望される場合は何の問題もなく治療に踏み切れば良いのですが、もっと厄介なのは、自覚症状がほとんど無いにもかかわらず、かなりひどい下アゴのずれがある患者さんの方でしょう

顎関節症を放置すると、どんな不都合があるのでしょう?

①  前歯の『つぎ歯』が繰り返し外れたり、壊れたりする。
②  義歯が良く合わない。義歯で良く噛めない。
③  歯槽膿漏がなかなか直りにくくなる。
④  物がなんとなく良く噛めない。
⑤  インプラント等の耐久性が低下する可能性が否定できない。
⑥  全身症状としての『肩こり』『腰痛』『頭痛』『生理不順』『めまい』『耳鳴り』『不眠症』などの症状に悩まされ続ける。

 どれをとってみても、不都合な事ばかりですね。
 まず、①の前歯の『つぎ歯』が繰り返し外れたり、壊れたりするという症状は、かなり沢山の方が経験された事があるのではないでしょうか?

 同じ『つぎ歯』が、何回も繰り返し外れる。

 歯医者さんに行ってくっつけてもらっても、また外れる。

 作り直してもらっても、また外れる。

 ひどい場合には、『つぎ歯』が壊れて、中の金属がみえている。

 こういった患者さんは、『あの歯医者はへたくそだ!』と考え、別の歯医者さんに行って、作り直してもらう。・・・でもまた外れる。

 仕方なく、瞬間接着剤でくっつける。・・・でもまた外れる。

 こういった状態を繰り返しておられるケースはとても多く見受けられます。

 『顎関節症』が原因で起こる、下アゴのズレは、上下の歯の噛み合せに大きな影響を与え、さらには、このズレた下アゴが原因となって、寝ている間にひどい『はぎしり』『噛み締め』を誘発します。

また、『顎関節症』の患者さんは特徴的な噛み方をします。

食事の時に奥歯でしっかり食べ物を噛み砕き、磨りつぶすといった動作をほとんどしません。

たいていの場合、糸切り歯の付近で適当に噛んだ後、すぐに飲み込んでしまいます。

これは『物が奥歯でなんとなくうまく噛めない』という症状の結果こんな噛み方になってしまうのだろうと推察されます。

 この動作は前歯の『つぎ歯』に、非常に大きな負担をかけます。

 元々自分の口の中にある健全歯である前歯がこのような力を受けますと、上の前歯がだんだん前に移動して、歯と歯の間に隙間が出来てしまいます。

 こういった事が繰り返され、ついには、前歯の『つぎ歯』が繰り返し外れたり、壊れたりするのですが、当の御本人は全くその事に気づいておられません。

 何かの縁で当院を受診された患者さんが、こんな訴えをなさった場合には、まず『顎関節症』を疑います。

 それなりの所見が認められた患者さんには、その因果関係を丁寧に説明します。

 納得して頂ける患者さんには『顎関節症』の治療を行なう事が出来ます。

 すると、あんなに何回も外れていた前歯の『つぎ歯』が全く外れなくなり、原因はやっぱり『顎関節症』だったのかと納得されるケースは非常に多く経験致します。

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 ③の義歯に関して、ひどい下アゴのずれがある患者さんにはどんな技術を使っても、どんなにお金を使ってもまともな入れ歯になりません。

 当院では、保険治療であれ、自費治療であれ、義歯の作製を希望して来院された患者さんに顎関節症(下アゴのずれ)が認められた場合には、まず、その状態や治療する事の意義について丁寧にご説明するようにしております。

 自費治療による義歯(スマイルデンチャー・金属床義歯等)を作製して装着しさえすれば、噛み易く、良い義歯になる訳ではないですし、保険の義歯でも顎関節症が治癒した状態で作製した方が、少なくとも噛むという機能だけは良くなります。

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 そして、希望された患者さんには、まず半年程度時間をかけて顎関節症の治療が終了したのち、入れ歯の型採りを行って、入れ歯を作成しています。

  そうした方が、噛みやすく、気持ちの良い入れ歯になります。

 ⑥の全身症状としての『肩こり』『腰痛』『頭痛』『生ba_1.jpg(13555 byte)理不順』『めまい』『耳鳴り』『不眠症』は、もっとも多く認められる症状で、以前は顎関節症の代表的な付随症状でした。

   更年期の女性に良く認められる不定愁訴の半分以上は顎関節症を治療する事により軽快してゆきます。ba_3.jpg(14807 byte)
 顎関節症治療により多くの方がこのような長年にわたる不快症状から開放されました。

 しかし、最近では『目が見えにくい』『目が疲れやすい』『目の奥が痛い』などの眼症状、『音が聞こえba_2.jpg(14160 byte)にくい』などの耳症状、頭皮のしびれ感指がむくむ指が曲がりにくいなどの一見、顎関節症との因果関係がはっきりしない症状が、顎関節症の治癒とともに消失してしまうという症例も多く経験するようになりました。ba_4.jpg(12298 byte)

 顎関節症のせいなのか、それとも全く関係ない症状が顎関節症の治癒と時を同じくして消失しているのか、私にも判然としないケースも増えてきています。

 これらの事実は顎関節症・噛み合せの不都合が全身のいろんな場所に廻り廻っていろいろな症状を発現させる可能性がある事を意味します。

 今後、研究が進むにつれて、これらの因果関係が次第に解明されてゆく事と思います。

顎関節症の実態

 

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